かつて一家惨殺事件のあった家で、心霊番組の収録に訪れたTVスタッフたちに異変が襲い掛かります。そしてそのビデオを見た八雲は突然に姿をくらまし、またその家でかつて起こった事件に関する捜査をしていた刑事の後藤までもが行方不明になります。
姿を見せるものの、捜査の手をすり抜ける一家惨殺事件の容疑者の男と八雲の失踪が結び付く「つながり」、晴香と八雲の思わぬ「つながり」、そして家族の「つながり」など、描かれるテーマは綺麗に凝縮された作品であると言えるでしょう。
そして、既にレギュラーと呼べる登場人物のキャラクターが確立していることで、八雲不在でもリーダビリティが損なわれることなく物語りは展開されます。
ただ、物語の焦点が八雲をとりまく「つながり」にあるために、事件の真相が明らかになる段階でのサプライズが若干弱まっている感じもしないではありません。
また、事件の裏に八雲の父親の存在があるという、これまでのシリーズで展開されたのと同様の基本構造は、あからさまなパターンになってしまっているということも指摘できるでしょう。
ですが、そうした作品としての弱い部分を持ちながらも本作は、かつて幼い八雲を手に掛けて殺そうとしたという彼の母親の過去が明らかになり、シリーズ通しての位置付けも、おそらくは重要なものとなるであろう1作なのは確かでしょう。