歌野晶午 『密室殺人ゲーム2.0』

密室殺人ゲーム2.0 (講談社ノベルス ウC-)
 ネット上に集うミステリマニアの「頭狂人」「044APD」「aXe」「ザンギャ君」「伴道全教授」らは、実際に自分が殺人を犯し、その謎解きをメンバーに提示する「殺人ゲーム」を繰り広げます。密室殺人、アリバイトリック、雪密室。これらを題材にした殺人ゲームの行く末とは。

 前作のラストから、続編は不可能のおそらく一発ネタだと思っていただけに、見事に著者の狙い通りに自然な形での「ゲーム続行」ぶりを見せられた1冊。
 それだけにその反面で、衝撃の度合いという面では、前作を踏襲することで前作以上のものを演出することは難しかったということもまた事実(もっとも、あくまでも本作はテーマのセンセーショナルさを売りにしているものではないことを思えば、それが欠点になっているわけでもない)でしょう。
 前作に引き続き、既存のミステリにおける密室なりアリバイトリックの意義というのが、殺人という目的(あるいはアクシデント)に付随しているのに対して、本作におけるそれは、「トリックのための殺人」という、まさに「ゲーム性」の追及にあるということが本作の一番の特色といえるでしょう。
 そしてその「ゲーム性」の追及と、その究極の行く末が結末部分に結び付いているという部分で、本作の狙いは見事に達成できたとも言うことが可能かもしれません。
 また、メイントリック以外にも、登場人物たちの雑談の最中にも惜しげなく披露されるトリックも含め、個々の事件で出題されるトリックの精度も前作以上の出来となっています。その意味で、その設定の奇異性を抜きにしても、本作はゲーム性をとことんまでに追及したミステリとして、特筆するものとなっています。
 挿話部分で明らかになる、前作から本作へとつながる流れに関しては、現実のネット社会のダークサイドを上手く用いることでスムーズな流れを演出しており、この辺りにも著者の上手さを見ることが出来るでしょう。
 この挿話部分が、本書全体へ仕掛けるトリックのバイアスとなっていても面白かったかもしれないな、とは思いましたが、敢えてこの形にしたことでのおさまりの良さというのもあるかもしれません。