三津田信三 『赫眼』

赫眼 (光文社文庫)
 小学生とは思えない不思議な色気とでも言うべきものを備えた少女、目童たかり。明らかに周囲の子どもたちとは違う空気を持つ彼女の家に、主人公の少年はクラス委員の友人と一緒に届け物をするために向かいます。そして、そこで異様な何かを感じたその日から、毎晩のように彼らの元を訪れるものがあらわれはじめます。

 『異形コレクション』に収録された短篇を中心に纏められたホラー短篇集。
 「作家・三津田信三」の登場する短篇では、著者自身の経歴や、実在の写真家や書物と架空のものを織り交ぜ、現実と虚構の境目があやふやになるようなあの独特の持ち味が短篇で味わえますし、また、表題作の『赫眼』も、死相学探偵シリーズとリンクする趣向の『死を以て貴しと為す』は、シリーズ本編よりもホラー度は強めとなっています。
 「作家・三津田信三」が登場する作品に見られるメタ的な世界構築と、各作品世界をゆるく繋いだ構成も、著者らしさに溢れていると言えるでしょう。
 表題作を含め、三津田信三のホラー部分を抽出したラインナップとなっており、濃密な空気感と、「何かがいる」という、そしてそこに潜むまがまがしい何かが迫ってくるような、著者のお得意の恐怖の演出が冴える作品集。
 また、短篇の合間にまるで実話のような「怪談」を挿入することでも、現実と虚構を一層曖昧にする効果を果たしており、一冊の本としての「作品」の完成度合いの高さを評価できるものとなっています。