若竹七海 『みんなのふこう』

みんなのふこう (文芸)
 葉崎のローカルラジオ番組の人気のコーナー、「みんなの不幸」に送られた投書で、ココロちゃんという17歳の女の子が次々に不幸な事件に巻き込まれる様子が読まれ、多くのリスナーの関心を惹き付けます。弁当屋のバイトでココロちゃんと知り合った女子高生は、疫病神でも付いているのではないかというほどに次々に災難を呼び込むココロちゃんの様子を投書に書き記しますが、彼女の周囲に見え隠れする新興宗教やら窃盗事件やらの陰はやがて、番組を担当する町井瞳子までをも巻き込み、大きな広がりを見せていきます。

 「天然」としか言いようのないココロちゃんのキャラクターは、おそらくは主人公に据えればイラッとくる個性でもあるのでしょうが、それを第三者であるバイト仲間の女子高生(ラジオネーム、ココロちゃんのぺんぺん草)の投書という様式を用いることで、何ともユーモラスですっとぼけた味のあるものとなっています。
 ですが、終始ユーモラスに語られて展開していくにも関わらず、物語が進むにつれてココロちゃんのあまりの不幸っぷりや、それをまるで理解していない彼女のズレっぷりに薄ら寒さすら感じさせられるあたり、著者の絶妙の書き方が見て取れる作品。
 著者ならではの人間の悪意やマイナス面が、徐々にあからさまになっていく過程もスパイスが効いていると言えるでしょう。
 葉崎のシリーズ読者には、覚えのある人物や場所もチラホラ出てくるので、その辺りも楽しめる作品。