ナンシー・アサートン 『ディミティおばさまと聖夜の奇跡』

 家族で過ごすクリスマスに思いを馳せ、その準備で夢中になっていたロリですが、雪の日に家の前で行き倒れになっている男性を発見したことで全てが変わってきます。意識も不明なままで身元も分からない男性が誰なのか、そして何故ロリたちの家の前で倒れていたのか。彼が今は亡きディミティおばさまを訪ねてきた可能性に思い至ったロリは、この男性のために行動することになります。様々な場所で聖人の如く思われていたり、あるいは狂人であると思われていたりする謎の男性はいったい何者なのか。

 茶目っ気があって含蓄のある助言をしてくれる幽霊、ディミティおばさまのシリーズ4作目。
 本作では正体も分からず行き倒れていたよそ者の男に対する、村人たちの意外なほどの冷淡さが当初描かれますが、同時にそんな冷淡さに対するディミティおばさまの懐の深さを感じさせる洞察や、一人の人間をきっかけにして変わっていく人々の姿から、著者の人間に対するやさしい眼差しがうかがえる作品でもあります。
 単なる豊かで満たされたクリスマスではなく、優しさの連鎖が見えるようなクリスマスを描いた本作は、ぜひともその時期に読みたい一作かもしれません。