梨沙 『恋するエクソシスト』

恋するエクソシスト (レガロシリーズ)
 他の人には見えないものが見えてしまう家系に生まれたため、「霊感女子高生」として心霊番組に出演することになってしまった刻子は、番組収録に遅れてやってきたエクソシストの神父のジャンに突然プロポーズされてしまいます。日本のアニメ文化に傾倒するオタクでもあったジャンは、日本滞在を決めたらしく、刻子の前に現れては熱烈なアプローチをしてきますが、番組収録中に怖ろしい気配を発するものの存在を感じ取ってしまった刻子の周りで異変が起こり始めます。

 いわゆる「携帯小説」の著者ですが、普通の女性向けファンタジーライトノベルの範疇に入る一作。登場人物の配置のバランスも良く、人物の個性や魅力も明快で、リーダビリティに富んだエンタメ作品として楽しめるでしょう。
 本書だけで物語は一応の解決が付く一話完結の形をとりつつも、今後の登場人物間の関係の変化や、神父のジャンの過去の仄めかしなど、本作は続刊を見越した布石がしっかりとなされた、シリーズの幕開けとしての役割も果たしているといえます。
 まだまだこの先の展開で掘り下げる部分は多いのでしょうが、エンターテインメント性に富んだライトノベルならではの魅力を備えた一作。