ジェフリー・ディーヴァー 『追撃の森』

追撃の森 (文春文庫)
 湖畔の別荘の異変を察知した保安官補のブリンは、そこで訪れていた夫婦が殺し屋に襲われたことを知り、彼らと一緒に来ていたものの難を逃れた女性を助け、二人での逃走を試みることになります。応援を呼ぶ手筈もなく深夜、彼女らを追って来る殺し屋の追跡ををまくためにブリンは、知力を尽くして深い森の中での戦いを始めます。

 本作は、殺そうと追跡してくる敵と、相手の裏をかいて生き延びようとする女性たちとの仕掛け合いによって展開する物語です。逃れるために手を打ったと思った次の瞬間、一層追いつめられ次の手を打たねばならないという、状況の逆転に次ぐ逆転が繰り広げられ、560ページを超えるボリュームを一気に読ませてしまう作品となっています。
 さらには、単なる逃亡-追跡劇には終わらず、事件の背景に隠されていた陰謀を暴き、そして真犯人との間で行われる対決までも一筋縄ではいかないものとなっています、その辺りの起伏に富んだ物語展開の面からも、実に著者らしい作品に仕上がっていると言えるでしょう。ノン・シリーズですが、こういう物語を著者が書いて面白くならないわけがないというべき一作です。