ナツイチ製作委員会編 『あの日、君と Girls』

あの日、君と Girls (あの日、君と)
 あさのあつこ荻原浩加藤千恵中島京子本多孝好道尾秀介、村山由香らによる、恋愛小説とも青春小説ともつかない、あるいはそのどちらでもある、10代の少女たちを描いた競作集。
 概して同じ年の男の子たちよりも早熟な少女たち、大人びているようでまだ自分の感情をコントロールしきれないフラストレーションに翻弄される少女たち、そんな彼女らの心情が、等身大で描かれます。
 競作のテーマである「あの頃の私」は、登場人物が回顧する自分であると同時に、読者が作中の登場人物の心情を、かつての自分自身に重ね合わせることのできる「あの頃の私」なのでしょう。
 それだけに、必ずしも後味の良いものばかりではなく、むしろ全体的に見れば「苦さ」が多い作品集に仕上がっていると言えるかもしれません。
 中でも秀逸なのは、中島京子による『モーガン』で、学校という場所に集まれば、自ずと少女たちは派閥を作り、グループ分けをし、そしてクラスの中、あるいはグループの中での少女たちのパワーゲームが行われる様が淡々とした筆致で描かれます。その中で「モーガン」に憧憬を抱く主人公の心情の瑞々しさが印象的であると同時に、結末の苦さに内包される、少女たちのしなやかな強さをも描いた本作は、ひと際個性的な作品になっています。
 また、このラインナップの中では、道尾秀介の『やさしい風の道』はやや異色作と言えますが、著者らしいやさしさの感じられる一作となっていると言えるでしょう。