法坂 一広 『弁護士探偵物語 天使の分け前』

弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
 母子殺害事件の容疑者である内田の国選弁護人を引き受けた主人公は、警察と検察が虚偽の供述調書を作成し、それを通そうとしていることに憤慨して行動を起こし、結果として懲戒処分を受けてしまいます。晴れてその処分が明けるタイミングで、離婚訴訟の依頼人を獲得しますが、病院に措置入院している内田に面会がかなわないことから、その病院の周辺に違和感を覚えます。

古き良きハードボイルド探偵ものそのままのような、もってまわった口調や行動パターンの主人公。それをある種のパロディとして楽しめるか、鼻に付くと取るかが、本書を楽しめるか否かのポイントかもしれません。
 あるいは、この主人公が存在し得る世界観を作り上げてしまうのならば「アリ」ではないかと個人的には思いますが、あくまでも現実世界(もしくはそれに近いところ)の物語として読むのならば、物語中のものとしても主人公の弁護士という職業とキャラクターの違和感は、リアリティの欠如と取れなくもないようにも感じます。
 事件そのものは、構造がそこそこ入り組んでいるにもかかわらず、ミステリとしてはもうひと捻りあっても面白かったかなという印象。