FBI特別捜査官のサビッチは、彼が解決に関わった銀行強盗事件の犯人グループの生き残りの少女が逃亡したことを知らされます。冷酷な強盗殺人犯である少女は、恐るべき執拗さと狡猾さで復讐の為にサビッチを殺しに来ることが分かっており、妻であり同じFBI特別捜査官のシャーロックとともに彼は、行く先々で犠牲者を出しながら逃走する少女の足取りを追うことになります。同時に、サビッチに不思議な方法でコンタクトをとってきたオータムという少女が何者かに追われて、母親とともに危機に瀕していることを知ります。現地の保安官のイーサンがこの母娘を守ろうとしますが、相手は不気味な催眠術を駆使する危険な人物でした。
FBI特別捜査官のサビッチ＆シャーロック夫妻のシリーズ作品。
本作では超能力という要素が大きく入り込んではいますが、それはあくまでもサスペンスの本筋を侵すものではなく、不気味な力を持った敵との攻防が緊張感をもって描かれます。
同時に、これまでのシリーズ同様に本作でも２つの事件がサビッチらを翻弄することになっており、オータムら母娘を守って戦う役割はもっぱら現地の保安官のイーサンが中心であり、サビッチ＆シャーロックの二人は、行く先々で次々に容赦なく簡単に人を殺し、命を狙ってくる強盗グループの生き残りである少女の追跡という、もうひとつの重大事件にも追われる傍らで、オータム母娘やイーサンを脅かす不気味な存在と対峙することになります。銀行強盗に端を発する事件の犯人の一人である少女も、超常的な能力を持っているわけではないにもかかわらず、どこまでも純粋な悪としての存在感は強烈であり、二つの事件にてそれぞれ別箇に、「悪」としか呼べない存在を擁していることが本作の面白さに繋がっていると言えるでしょう。
新たな要素を取り込みつつも、安定したシリーズの作風が楽しめる１冊でした。
