J・D・ロブ 『悪夢の街ダラスへ イヴ&ローク34』

悪夢の街ダラスへ イヴ&ローク34 (ヴィレッジブックス)

 かつてイヴが駆け出しの警官だった頃に逮捕した犯罪者が、刑務所から脱獄を果たし、イヴに対して復讐を目論み挑発をしてきます。そして、「イヴ・ダラス」という人間が誕生したとも言える街・ダラスで人質をとった犯人を追って、イヴは幼少期のトラウマを思い出させる街へと、夫のロークと共に向かうことになりますが……。

 シリーズ初期から子ども時代の虐待の記憶に苦しまされてきて、またそれが警官になる原動力であったイヴに、本作ではこれまで以上に過酷な状況が襲い掛かります。
 プロファイルを軸に、犯人に迫っていく捜査スタイルはシリーズを重ねて安定しつつも、物語のマンネリ化は本作では見られず、起伏に富んだ展開で最初から最後まで楽しめました。
 予想外の展開とトラウマに苦しめられる主人公イヴと、彼女を支える夫ロークとの関係には、このシリーズの最も根幹であるものを再確認させられる一作となったとも言えるでしょう。