秋川滝美 『居酒屋ぼったくり3』

居酒屋ぼったくり〈3〉
 ちょっとした心配りを添えて出される料理が人の心までも解きほぐす…という基本構造で展開する、良くも悪くも安定のシリーズ3作目。料理と酒のネタの豊富さは楽しめますし、各編の質も安定しているものの、3冊目ともなるとややマンネリ化も避けられないのかもしれないという感じもしないではありません。
 主人公であり、父から受け継いだ居酒屋「ぼったくり」を取り仕切る美音の、店主であり料理人としての年に似合わぬ深みと、年相応の若い女性ならではの部分とが両方垣間見えるこのシリーズは、もともとのネット小説としての掲載時では、恋愛小説的要素が強かったのを、書籍化に当たりその部分を控え目にしたという経緯があるようです。
 当初はその試みが成功していた面はありますが、シリーズとして巻を重ねたこの辺りになると、連作短編集とは言え、そろそろ「シリーズとしての進展」が欲しくなるのかもしれません。。