久住四季 『星読島に星は流れた』

星読島に星は流れた (創元推理文庫)
 数年おきに隕石が落ちてくるという、天文学者の所有の孤島で開かれる天体観測の集い。マサチューセッツ州の田舎町に住む医師である加藤盤をはじめ、物凄い倍率を潜り抜けて今年のメンバーに選ばれた7人は島へと向かいます。毎回この天体観測の集いに参加した者の中から一人、参加期間中に落ちてきた隕石を譲渡されると言いますが、果たして隕石は落ちて来るのか。そして何故この島にはそんなに隕石が落ちるのか。そして、集いの三日目になり、隕石の所有権が誰のものになるのかが互いに気になる中で、メンバーの一人が死体となって発見されます。

 絶海の孤島というクローズド・サークルの中で起こる殺人という、実にオーソドックスな物語の骨組みはしかし、あり得ない頻度で落ちてくる隕石という、不可解な力がそこに働いているかのような舞台立ての中で展開します。トリックそのものや犯人が誰なのかという点については、それほどの意外性は無いような気はしますが、犯行に至る動機やその必然性については思わぬ盲点を上手く演出しており、またフーダニット・ホワイダニットハウダニットが複合的に使われているにもかかわらず、煩雑さを感じさせないリーダビリティを備えた作品であるということは言えるでしょう。
 謎が明らかにされることで、幻想的な舞台立ては一度は崩壊するものの、過去に家族を失った加藤という一人の人間の再生を思わせるラストの読後感が非常に印象的でした。