阿部智里 『烏に単は似合わない』

烏に単は似合わない  八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

宗家とそれを支える四家が支配する世界。その宗家の次代である若宮の后候補として四家の姫君が集められ、若宮の寵を競う華やかな宮廷。そこに集まったのは、急遽姉の代わりに登宮した東家のあせび、冷たい美貌で誰よりも入内に執心する北家の白珠、姫君らしからぬ物言いをする南家の浜木綿、美しく華やかで恋心を露に他家を牽制する西家の真赭の薄。彼女らとその背後にある家の思惑が蠢く中、次々に事件が起こります。

読みはじめは、良く出来た和製ファンタジーと思いきや、終盤では論理でもって解きほぐされた真相で、それまでの人間模様がひっくり返るミステリの要素満載の一作。本作が松本清張賞受賞作というのも頷ける作品でした。
四家の特色や力関係、姫君たちの現在を形作った過去といったものが、極めて論理的で納得のいく形で明らかにされる結末は、丁寧に描かれる登場人物たちの思惑の必然的な着地点と言えるでしょう。
また、ファンタジー作品としても緻密に構築された作品世界に、今後の展開が期待される一作。