アガサ・クリスティ 『魔術の殺人』

魔術の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 物事を見る角度を変えればその姿はまったく違ったものになる、というのは現実においてもその通りですし、ミステリの世界でもよく使われることなんですけどね。それを非常にシンプルかつストレートに描いた作品だなというのが印象です。
 ポワロものにしてもそうですけど、事件の中心には犯人だけでなく被害者や場合によっては他の人物があり、その人物を読み解くことが解決になるというパターンは多いです。特にクリスティはそういうの好きなのかなと思ったりしますが。
 今回は登場人物の人間関係が若干ややこしい話ではあるのですが、事件に結びつく人間関係というのは説明されれば非常にシンプルなんですね。トリックと言い、「なんだそんなことか」ということではありますが(ある程度ミステリに慣れている読者ならすぐに分かってしまう危険は多分にあるのですが)シンプルだからこその面白さがありました。

 タイトルの『魔術の殺人』、原題を意訳したんでしょうけど作品のイメージとしては個人的にはイマイチピンとこないなぁと思ったり。言わんとするところは実に分かるんですけどね。


 さて。ミス・マープルものであと読んでいないのは残すところ2作品だけになってしまいました。
 何故か第1作『牧師館の殺人』とか読んでいなかったりするんですよね。それからあとは来月のクリスティ文庫で出る『動く指』。こうなると何だか読んじゃうのが勿体無い気もします。