恩田陸 『ユージニア』

ユージニア

「忘れられた祝祭」という、後になってから事件を取材した関係者の手による本を介し、さらにワンクッション置いて、過去の事件が断片のように語られています。
 この手法が作品全体を薄い紗のようなもので包み込んで、何ともいえない雰囲気を出しているのが本作の魅力のひとつではないでしょうか。
 本の著者、事件に関わりさらに本を書く際に取材を受けたりした関係者に会い、そこで徐々に事件のことが明らかになってくるのだが、最後の最後になってもいくつかの謎は意図的に残されたままですね。何だかスッキリとしない謎の残し方なのですが、そのスッキリとしない読後感が、不思議な余韻を残していますね。これもまた著者の狙い通りなんでしょうね。