霧舎巧 『名探偵はどこにいる』

名探偵はどこにいる
 前作『名探偵はもういない』より20年後という設定で、『あかずの間研究会』シリーズとの繋がりもありますが、これはこれで独立した話として読めるものです。前作で後動が連れていた双子、安奈と甘奈の事件が何だったのか、失踪した後動に代わって上層部から依頼を受けた今寺により、本作で謎が解かれます。
 双子の姉妹が書いた日記に書かれた殺人計画とそれを知った脅迫者の謎、今寺の学生時代の初恋相手にまつわる謎が、上手い具合に絡み合って物語りは展開します。
 ただ、それなりの説得力はあるものの、謎解きはほとんど全てが推論であり具体的な証拠には欠けている点に甘さを指摘せざるを得ません。事件そのものも、20年前に後動が解いたものを追うというだけであり、この点でも謎そのものが小粒だと言わざるを得ないでしょう。
 今寺の初恋の相手であった少女についての描き方は、良い意味で過剰なほどに感傷的で作品に味を持たせていると言えますが、これは多分読み手を選ぶのではないでしょうか。
 些かこじつけ的ではありましたが、20年前の脅迫者が持っていた荷物の中にあったリストに隠れた秘密については面白かったです。