キャサリン・コールター 『カリブより愛をこめて』

カリブより愛をこめて

 事故に遭って昏睡状態の母親の秘めた日記を読んで、自分の出生を知った事件記者のラファエラは、彼女の遺伝子上の父親であり、闇の武器商人であるドミニクを破滅させるために、カリブ海にある彼のリゾートへやって来る。一方で、ドミニク片腕として働くマーカスもまた、税務局の意向を受けて潜入を続けるという、二つの顔があって――と、FBIシリーズに比べればかなり普通のロマンス小説でした。
 CIAにいた前歴があって、頭脳も肉体もキレがあって女たちに色目を使われるマーカスのヒーローっぷりだとか、ピューリッァー賞も受賞して才色兼備なラファエラがめくるめく官能に流される展開だとか、互いに相手がの本当の正体を探りあい、警戒しつつも惹かれ合うだとか、まぁハーレクインの王道なのかなという感じではありました。
 FBIシリーズに比べればやはりそういった部分ではいわゆるハーレクインのテンプレートのような枠組みを出ないものの、日記を通して描かれるラファエラの母親や、現在の彼女の夫であるチャールズ、そして傲岸不遜なドミニクや彼の愛人の人物造詣などはそれなりに面白かったです。
 肝心の話に関しては、ラファエラとマーカスの最初の目的はどうなったのか?と言いたくなるような結末は少々疑問だったものの、ドミニクの命を狙う"パテシバ"なる組織に込められた意味合いなどは面白かったです。ただ、やはり細かい部分を言えば、設定段階でかなりご都合主義で荒っぽい部分があるのが残念だと言わざるを得ないでしょう。