テリー・ヘリントン 『フラッシュバック』

フラッシュバック
 ロマンス小説の中にも、いわゆるタイムトラベル物というのはそれなりにあるらしく、ダイアナ・ガルバトンのアウトランダー・シリーズ以外にも本作など、きちんとハーレクインの世界でもカテゴリとして成立しているようです。

 カメラマンのセアラは、目の前で事故によって死んだ老人のことが何故か頭から離れず、彼のことを色々と調べ始めます。やがてこのマーカスという老人の遺品のカメラを使っているうちに、40年前の世界へと飛んでしまうことになります。
 双子の妹のカレンに呼ばれると、否応もなく現代に引き戻され、そうして時を越える旅がセアラの肉体に過酷なまでの負担をかけることが判明します。

 最初から別れが決まっているバッドエンディングの物語と見せかけて、かなり力技ではありますが綺麗に終わらせた作品だなという印象。ですが、現在を生きるのか、それとも過去の世界で見つけた相手と共に生きるのかという選択枝に加えて、強制的に主人公を引き戻してしまう双子の妹という存在が、どうにもならない障害として上手い具合に機能することで物語に起伏を生んでいると言えるでしょう。
 ただし、特に過去の世界でのマーカスとの関わりに対する記述の比重が少ないために、些か説得力が不足した部分も感じられます。設定的に一捻りが効いているだけに、その辺りが惜しいなという印象。

 タイトルの「フラッシュバック」は、いわゆるPTSDなどの症状を絡めた意味合いもあるのでしょうが、カメラのフラッシュと時代を遡ることを併せて想起させるダブル・ミーニング的なものかもしれませんが、どうなんでしょう。