アリスン・ブレナン 『ザ・プレイ』

ザ・プレイ (集英社文庫)
 FBI捜査官を退職した後に売れっ子ミステリ作家となったローワン。ですが、何者かが彼女の小説の中の殺人を模したと思われる事件を起こします。犯人の狙いが彼女にあるとして、24時間の警護をするためにボディガードが派遣され、ローワンの元同僚のFBIも必死の捜査をするものの、第二・第三のコピーキャット事件が起きて徐々に犯人はローワンに迫ります。事件の背後には彼女の隠された過去が絡んでいることを確信したボディガードのジョンは、頑なに口を開かないローワンに迫りますが、そのことが新たな事件を生んでしまいます。

 「ノーラ・ロバーツ×スティーブン・キング」という帯は明らかに煽り過ぎですが、ロマンス寄りの軽めのサスペンスという意味では、作品傾向のひとつの目安にはなるかもしれません。またFBIを退職した売れっ子作家の作品のコピー・キャットという設定そのものも、先に挙げたベストセラー作家に通じて、非常に読者の食いつきの良い要素を持っていると言えるでしょう。
 ただし、無意味な太字強調はいただけませんし、割と序盤で先の展開が読めてしまう、悪い意味での分かり易さは、面白くなる設定だけに何とも勿体ないところ。サスペンスとしても、またいわゆるロマンス小説として読むとしても、中盤でひとつの山場を迎えてしまった後の展開のインパクトが弱い気もします。
 また犯人に関しても、周囲を欺くために取った犯人の手法の実行可能性に首をひねる部分が皆無ではありませんし、主人公らが犯人に辿り着く過程でもうひとひねりあった方が面白かったという気もします。
 さらにいえば、本作単体の中では存在意義の薄い設定やエピソードが、「三部作」という出版サイドの都合だけのために、些かあからさまに挿入されているのも気になるところ。
 設定そのものは面白いだけに色々と残念な部分もありますが、総じてリーダビリティは高く、ボリュームの割に軽く読み流せる手軽さはある1冊。