ローラ・チャイルズ 『ダージリンは死を招く お茶と探偵 1』

ダージリンは死を招く お茶と探偵 (1)

 お茶の専門店"インディゴ・ティーショップ"を経営するセオドシアが、毎年恒例の出張ティーサロンを開催したところ、そこに来ていた客の一人がカップを持ったまま死んでいた――という事件で幕を開ける本書。
 お茶と毒という、英国ミステリのテイストを期待していたら、残念ながらどうもあらゆる面で今ひとつ感を感じざるを得ませんでした。

 伏線も無く、唐突に明らかになる結末だとか、真相に辿り着くための手掛かりの提示が不十分であるとか、そういったこと以外にも、今ひとつ登場人物の書き込みが薄く、事件の容疑者であるべき人物達のアクの強さのようなものが感じられません。
 一応、ミスリーディングらしきものも無きにしも非ずではありますが、それも問題となる人物の視点に切り替えて記述していることで、あっという間に「違う」のだと分かってしまいます。
 また、視点の切り替えの多用だけではなく、短すぎる区切りで、集中して物語に入り込むことが困難である点も指摘出来るでしょう。
 おそらく翻訳が、最近のこの手のものにしては古臭過ぎる訳であるというアドバンテージの低さもあるのでしょうが、素材のわりに「今ひとつ」な1冊でした。