ペニー・ジョーダン 『シルバー』

シルバー

 かつては冴えない容貌であった上に、叔母の悪意のせいもあって醜く太っていたジェラルディンは、父の死と彼女を利用しようとした従兄弟のチャールズの裏切りに、姿を変えて復讐のために魔性の女シルバーとなります。
 そして自分に酷い仕打ちをしたチャールズを虜にするために、シルバーは麻薬組織に妻を殺されて復讐の相手を探す盲目の男、ジェイクに、ベッドでの手ほどきを200万ポンドのレッスン料を払って頼みますが――。

 ――とまぁ、粗筋だけ読めば復讐譚が中心となるはずなのですが、実際に復讐のためにシルバーが動き出すのは第4部に入ってからであり、それまでの主要登場人物それぞれの幼少時代からの生い立ちの物語が冗長な印象をどうしても受けてしまいます。
 人物造詣という部分では、確かに説得力を持たせるためにこの過程は必要なのでしょうが、だとしても、復讐に執念を燃やしていたはずのシルバーが、あっさりとその手段を放棄してしまう辺り、どうにも主人公の造詣の面での弱さが目に付きます。
 また、父がチャールズに殺されたという証拠の弱さや、ジェイクが復讐相手に辿り着く過程がまるで不足しているために、サスペンス部分ではかなり粗が目立つと言えるでしょう。