キャンディス・キャンプ 『初恋のラビリンス』

初恋のラビリンス
 19世紀のイギリス、没落貴族の令嬢として生まれたアンジェラは、恋人だったキャメロンと酷いやり方で別れさせられた挙句に経済援助目的で好きでもない男のもとへと嫁がされます。それから13年が過ぎ、離婚により地獄のような結婚から解放されていたアンジェラのもとに、アメリカで実業家として成功したキャメロンが強引に結婚を持ちかけてきます。もう二度と結婚などしないと思っていたアンジェラですが、再び家族のために意に沿わぬ結婚をすることになり・・・。

 原題は"Impulse"。こっ恥ずかしい邦題の方が内容的には合っている感じがします。
 前の夫の虐待により男性に恐怖感を植え付けられたヒロインという、ある意味型通りのヒストリカルですが、この前夫の悪辣ぶりが相当なものであるためにインパクトのある作品に仕上がっていると言えるでしょう。また、キャメロンの出生の秘密なども絡めた後半の展開と構成により、ある程度の捻りも効いていて楽しめました。
 ただ序盤から中盤で物語の焦点がぼやけて、少しばかり冗長な部分も無きにしも非ずといったところでしょうか。
 さらに言えば、それぞれの過去のつらい経験などが表面的な記述にとどまり、登場人物の掘り下げが甘いことも指摘できるかもしれません。