エリザベス・ローウェル 『三つの死のアート』

三つの死のアート
 無名の画家だった祖父から残された絵を、レイシーは有名な女流画家であるスーザの鑑定に出すことに決めます。世に埋もれた祖父の才能を再評価する機会を得たいと願っていたレイシーですが、スーザが絶賛した祖父の絵には秘密があることに気付き始めてしまいます。そして、死の連作とレイシーが名付けたこの祖父の絵を世間に出した途端に、彼女の周りでは不穏な何かが起こり始め・・・。

 導入部からして、細切れに視点が入れ替わる辺りは少々読みづらさを感じますし、主人公以外の視点をそれ程頻繁に必要としてはいない気もしますが、中盤で祖父の絵にまつわる疑惑が徐々に深まっていった辺りからは、テンポも良くなって一気にラストまで読み通せました。
 ただ、祖父の絵の真相に関しては当初からほぼ予測したままですし、かなり分かり易く伏線が何度も繰り返されているために、最後の結末に関してもあまりサプライズはありませんでした。
 その意味では、扱っているテーマもストーリー本来も魅力的な要素を持つだけに、演出上の問題で損をしているかなと言う印象。
 また人物造詣に関しても、もう一歩踏み込めば癖のある面白いものになったのではないかという、ボリュームのわりに物足りなさも感じた1冊でした。