パトリシア・コーンウェル 『死因』

死因
 海軍の施設と隣接しており、潜水禁止となっている場所で発見されたダイバーは、検屍局長のケイ・スカーペッタも顔見知りのジャーナリストでした。地元警察の担当刑事や海軍のあからさまな妨害や嫌がらせに憤慨しつつ、ジャーナリストの死因に不審なものを感じたケイに、彼女と組んでいる刑事のマリーノから、被害者が最近問題になっているカルト教団との関わりがあるという情報が入ります。

 まず、3冊続いた殺人鬼ゴールト編が終わって、些かテンションが下がった感も否めず、あらゆる要素が散漫な印象があります。
 まず一番大きいのが、「狂信的な」と謳ったカルト教団を関わらせておきながら、最後の最後までカルトの人間が直接は出て来ないことでしょう。特に危険な思想を示すバイブルが事件の鍵であるのにも関わらず、教団そのものに対する記述が極端に不足している点が指摘出来ます。
 また、前作から引き摺っているベントン・ウェズリーや姪のルーシーとの関係なども、この1作だけを見ればむしろ物語の中では余分な要素に見えてしまい、散漫な印象を増す要因となっています。