シャノン・マッケナ ほか 『キス・キス・キス』

キス・キス・キス
 付き合う男がことごとくロクでもなく失望したジンジャーは、真面目で野暮ったくて仕事に生きる女を演出するファッションにイメージチェンジをし、この先2年は男断ちをしようと心に決めます。ですが、まさにそのタイミングで出会ったクライアントは飛び切り良い男のカルで、彼女のファッションだけを見て仕事を任せることが出来ないと判断します。(E・C・シーディ『魔法のキス』)
 列車でたまたま出会ったオースティンとデルは、抗い難い物を感じてゆきずりの関係を持ってしまいます。ですが、その関係を進めることに怖れを持つデルと、彼女を逃したくないとは思いながらも最後の最後では強引な手段に出られずにいたオースティンは、限られた時間内での一夜の関係の終わりを常にどこかで意識しています。(ドナ・カウフマン『ひざまづいてキスをして』)
 役者あがりの優秀なヘッドハンターのジェインは、手違いで引き抜きをかけようと思った人物の上司である、CEOのマックと出会ってしまいます。自分の身分を偽って彼と出会ってしまったジェインに、マックは強引に迫ってきます。ですがジェインは急速に彼に惹かれると同時に、不安定な自分の感情を隠しきれずなくなり、逃げ場を失います。(シャノン・マッケナ『キスよりせつない朝』)

 原題を見ても、内容を読んでも、どこが『キス・キス・キス』のタイトルの下に編纂されるオムニバスなんだか良く分かりませんが、どれも非日常のシチュエーションで自分を偽って解放出来ずにいた女性のラブストーリーという共通項は辛うじて見えてきます。
 ボリューム的には3編の中ではシャノン・マッケナの『キスよりせつない朝』が本書の半分を占めており、ストーリー的にも掘り下げて描かれているということは言えるでしょう。
 また、分量は少ないながらも『魔法のキス』のはじけっぷりは、長編でも十分に引っ張れる素材という気はしました。
 さらっと読めて、これの前に読んだ『痙攣的』の世界とのあまりのギャップに、私も非日常を感じました。