綾辻行人 『十角館の殺人』

十角館の殺人 新装改訂版 (講談社文庫 あ 52-14)
 建築家中村青司の「青屋敷」と呼ばれた館が火災で焼失し、残された十角形の奇妙な館「十角館」だけが残る孤島、角島に、大学のミステリ研の7人が訪れます。そして本土では、角島行きに参加しなかった江南と守須らの元に「お前たちが殺した中村千織は、私の娘だった。」という、半年前に焼死したはずの中村青司が差出人の手紙が届きます。本土で江南らが半年前の青屋敷で起こった事件の謎を追う一方、角島では次々に学生が殺されていきます。

 独特の館のディティールが素晴らしい存在感を持った作品であり、『暗黒館の殺人』まで読了後に改めて読み返すとまた違った感慨のある一作。
 ヴァンのキャラクターに若干のブレを感じる部分も、今読み返せばないわけではありませんが、本作においては、孤島である角島と本土の同時進行で展開するプロットの上手さが全てであると言っても良いかもしれません。
 新装改訂版の文庫には、著者のあとがきに加え、旧文庫版の鮎川哲也の解説、そして新たに戸川安宣の解説と2007年10月現在の綾辻行人の著作リストを収録。