ノーラ・ロバーツ 『シルクの闇に咲く花』

 女性警部補のアリシアが使っていた情報屋のワイルド・ビルが殺害された時、一緒にいた男は私立探偵のコルト・ナイトシェイドでした。アリシアの上司とも知己だという私立探偵のコルトは、家出して犯罪に巻き込まれている可能性の高い少女リズを探すために、アリシアとともに殺人事件を捜査することになります。

 『真夜中にささやく唇』『夜は甘き薫りを』に続くシリーズ三作目。各作品がスピンオフ関係にあるので、本作においても前二作の主人公カップルが登場していますが、本作が「シリーズである」ことを念頭においておかなければ、そのことには気が付かない程度。各作品においてはそれなりに個性的であったはずの人物達ですが、何故か本作ではその辺りがぼやけていることは、シリーズとしては弱さと言わざるを得ないかもしれません。
 また、原題ではおそらくシリーズとしての統一性も保たれていたのでしょうが、邦訳に際してそのことがあまり考慮されていないのは残念な点。
 サスペンスとしては、描かれる事件がどうも書面的で盛り上がりが弱く、もう少し緊迫感があっても良さそうな感じも受けます。ただリーダビリティは高いですし、本書程度のボリュームの中では上手く読ませているという意味で、手馴れた感じは見受けられます。
 アリシアのトラウマに関しても予想の範囲内のことがさらっと叙述されたというレベルに留まってはいますが、分量と内容のバランスを考えれば致し方ないのかもしれません。