神永学 『心霊探偵八雲3 闇の先にある光』

心霊探偵八雲3  闇の先にある光 (角川文庫)
 マンションから飛び降り自殺をする女性の幽霊を調査しに出かけた八雲と晴香の前に、死者の魂が見えるという八雲と同じ"体質"であることを匂わせる霊媒師が現れます。一方、八雲から言われて過去の事件を調べていた刑事の後藤は、その事件がかつて自分が関わったものであったことを知ります。

 シリーズ序盤から事件の裏にいる「悪」として描かれていた、八雲の父親との関わりを思わせる「赤目の男」の登場、警察組織の暗部など、本作は各キャラクターとそれぞれに絡む要素が上手い具合に配置された長編に仕上がっています。
 テンポ良く進む物語は、正統派のライトノベルとして高いリーダビリティを持っていると言えるでしょうし、シリーズ3作目になって脇を固める刑事の後藤のキャラクターを浮き彫りにして「読ませる」物語に仕上げたという部分での評価はすべきところ。
 大きなサプライズがないのは残念といえば残念ですが、エンターテインメント性の高さ、テンポの良さ、登場人物の掘り下げなど、前2作を上回るものになっていると言えるでしょう。