南園律 『最上階ペンタグラム』

最上階ペンタグラム (ミステリ・フロンティア)
 企業犯罪の潜入捜査が専門の海坂理歌は、何故か殺人がらみの事態に巻き込まれた挙句、彼女らの仕事上の天敵とも言える産業スパイとともに事件の捜査に首を突っ込むことになってしまいます。病院で秘書をしていた女性の自殺を洗いなおす際に見つけてしまった、患者情報の流出事件。潜入先企業での社長秘書毒殺事件。社員旅行先のハワイでのエステサロンにおける日本人客の殺害事件。会社の稼ぎ頭で海坂が心酔するコンサルタントだが、彼が指名された明らかに畑違いのストーカー事件の、4編が収録。

 第三回ミステリーズ!新人賞最終候補作の表題作を連作化したデビュー短編集。
 ユーモラスな登場人物は皆、キャラクターが立っており、シリーズものとしての魅力と安定感を備えていて、ライトノベルテイストのミステリとして楽しめます。
 個々の事件の構造は無理のないしっかりとした骨組みのもとに構成されていますし、解決のプロセスなどは伏線や証言から論理的に辿れるようしっかりと組まれており、ライトノベルテイストのテンポの良さと、実にオーソドックスな謎解きを兼ね備えた作品集となっています。
 今後続編に期待したいシリーズ。

2009年読了冊数:27 積読:6