アンソニー・ホロヴィッツ 『ストームブレイカー』

ストームブレイカー (集英社文庫)
 突然叔父が車の事故で死んだと聞かされた14歳の少年アレックスは、実は叔父のイアンは国の特殊工作員であったことを知らされ、さらには叔父の仕事を引き継いで潜入調査をするように命じられます。そして短期間の詰め込み訓練の後、アレックスは国内の学校に新型コンピュータを無料で寄贈するという、首相の元同級生だったという実業家を探ることになります。

 14歳の少年スパイ、アレックスが活躍するシリーズ1作目。
 死んだ叔父がMI6の工作員で、14歳の少年がその仕事を引き継いで、ジェームズ・ボンドばりに活躍するという冒険アクション小説。
 14歳にしてスパイという特殊な仕事に大人顔負けの高い順応力と能力を見せる主人公ではありますが、周囲の大人たちは彼を年相応に扱わず、庇護するどころか窮地へ追いやるような行動を取ります。そうした時に見せる、14歳の少年でしかないアレックスの心許なさが、作品の中では良いアクセントになっていると言えるでしょう。
 ただその半面で、アレックスを取り巻く大人たちへの掘り下げは甘いようにも感じます。
 ジュブナイルとしての読みやすさやテンポ良く展開が進むスピード感などはあるものの、どこか映画やドラマのノベライズ的な薄さのような空気が全体にあることは残念。