永嶋恵美 『一週間のしごと』

一週間のしごと (ミステリ・フロンティア)
 隣に住んでいる長差馴染みの菜加は、犬猫どころかアルマジロまで拾ってきてしまう「拾い癖」があります。そんな彼女が今回拾ってきたのは、人間の子どもでした。菜加の弟の克己からの電話で駆けつけることになった恭平は、その子どもが集団自殺のメンバーに関係があるらしいと知らされます。警察には届けられないという菜加の懇願に負け、何とかその子を身寄りに届けようと、恭平は頭を捻ることになります。クラスメイトの忍の協力で学校を抜け出したり、恭平は菜加の後始末に奔走させられることになりますが、その子どもを巡る事件の根には、どうやらさらに不穏な何かがあるらしいことが見えてきます。

 何でも拾ってきてしまうヒロインの菜加というキャラクターが、おそらくは天真爛漫で情に脆いというキャラクター像を狙った部分はあるのでしょうが、どう見てもわがままで思いつきだけで行動し、結果周囲に迷惑をかけてもなんとも思わない無責任な人間、としか受け取れないという点で、正直なところまず引っ掛かりを覚えてしまった作品。
 逆に、登場人物の思いつきや行き当たりばったりの行動で展開が進む作品であるというのであれば、主人公の恭平はそのストッパーにしかなり得ませんし、結果、妙な力加減で勢いを削がれた物語となってしまった感があります。
 ミステリとしての読みどころはといえば、序盤で水戸へ向かったはずの菜加からのSOSを受けた恭平が、とあることに気付く辺りが最もロジックとしての評価が出来る部分。ただ、メインである拾ってきた子どもを巡る事件の展開や、終盤で恭平が気付いたある人物との駆け引きに関しては、サスペンス要素はあるものの、それもまた成り行きだけで事態が進んでいる印象もあります。
 そして、大きな喪失感や友情という、青春小説的な要素もまた本作には盛り込まれていますが、この辺りは中途半端に後味が悪い割にあっさりとし過ぎた処理と、人物の掘り下げが十分ではないために、本来あるべき効果を発揮出来ていないといわざるを得ないでしょう。
 そこそこテンポ良く、リーダビリティの確率やキャラクターで物語を引っ張る方向性も出ているだけに、どの要素も「そこそこ」で終わっている気がする薄さが勿体ないなという一作。