アリスン・ブレナン 『唇...塞がれて Speak No Evil 上/下』

唇...塞がれて Speak No Evil 上 (ゴマ文庫)唇...塞がれて Speak No Evil 下 (ゴマ文庫)
 サンディエゴのビーチで、ビニール袋をかぶせられ、窒息させられた女子大生の全裸死体が発見されます。彼女に付きまとっていたらしい元恋人のスティーブが、すぐに容疑者として浮かび上がりますが、無実を訴えるスティーブは、モンタナで保安官をしている弟のニックに助けを求めます。兄の元に駆けつけたニックは、この事件が連続殺人犯によるものではないかと直感し、事件を担当する女刑事のカリーナらと協力することになりますが…。

 『ザ・ハント』で登場した保安官のニックが、前作で負った傷を抱えながら事件に挑む物語。
 タイトルの『唇...塞がれて』は、文字通り被害者の女性たちが唇を接着剤で塞がれるというもので、事件の猟奇性の演出はしっかりとされていますが、犯人の女性を憎む心理構造などはやはり、オーソドックスな設定の域を抜け切らないものではあるでしょう。
 また犯人に辿り着く道筋は、インターネットを介しての捜査がメインであり、プロファイリング的な物はその説明付けに過ぎないという部分も強く、サスペンス的な緊迫感も前作よりは若干抑え目になっている気はします。
 全体的に破綻なく纏まっているものの、逆に上下巻のボリュームにも関わらず小さくまとまりすぎた感じもしなくはありません。