ジェフリー・ディーヴァーほか 『ショパンの手稿譜』

ショパンの手稿譜 (ヴィレッジブックス)
 ポーランドワルシャワで、アメリカ人の音楽史の専門家であるハロルド・ミドルトンは、知り合いのピアノ調律師で古い楽譜の蒐集家が殺されたことを知らされます。かつては軍の関係機関で諜報活動もしていたハロルド・ミドルトンは、自分の手にある偽の「ショパンの手稿譜」に絡んで、何かきな臭いものが動き出していることを感じます。そしてハロルド・ミドルトンに迫る手は、彼の娘のシャーロットや、殺された調律師の姪のフェリシアにまで迫ってきます。

 最初と最後をジェフリー・ディーヴァー執筆担当する、総勢15名の作家陣によるリレー小説。
 短いスパンで書き手が変わることで、視点が頻繁に飛ぶこともあり、やや散漫な印象もありますし、音楽という素材を使ったミステリ・サスペンスとしても、そのガジェットを生かしきれていない部分は否定できないでしょう。
 多くの執筆者によって繋がれるリレー小説というものの特性上致し方ないのでしょうが、一人の作家が書くのに比べると1話1話でテンションが途切れてしまうことや、登場人物の印象も書き手によって微妙に異なってしまうのは、読み手にとってはつらい部分かもしれません。
 ただ、(これも1本の長編小説として読む場合には、緩急がないので良いとも悪いとも言い難い部分はありますが)序盤から終始急展開に次ぐ急展開によるスピード感や、終盤での一気呵成に結末になだれ込み、最後まで気を抜かせない展開の面白さは味わえます。