小路幸也 『探偵ザンティピーの休暇』

探偵ザンティピーの休暇 (幻冬舎文庫)
 NYで探偵をするザンティピーは、日本の北海道の田舎町の旅館に嫁いだ妹のサンディのもとを訪ねます。旅館の跡取り息子の嫁として幸せそうに暮らすサンディを見て安心するザンティピーですが、彼は妹が何か困っていることを察します。サンディにそのことを問い質すと、何と彼女がその土地の習わしで入ってはいけない浜で、人間の白骨死体を発見してしまったのだと言います。厳格な祖父のゼンジローの手前、その場所に入ってしまったことを言うことも出来ず、かといって見つけてしまった白骨死体をそのままにしておくのもしのびないサンディの心情を思い、ザンティピーは自分がその死体を「うっかり」見つけてしまったことにしようと計画を練ります。

 「寅さんシリーズ」で言葉を覚えたという主人公の造詣ゆえか、いわゆる「どこか間違った日本かぶれの外国人」としての性格付けをされたザンティピーの言動は、山口雅也の『日本殺人事件』を彷彿とさせるおかしさが味になっています。
 単なる探偵物・ミステリとして読めば薄味にも思える反面、どこか人間臭いおかしさに溢れた本書のテイストは著者の作風とも上手い具合にマッチングしており、おそらくはNYを舞台にした物語では生まれ得なかった作風となっており、主人公の台詞が江戸っ子口調の日本語で語られていることから生まれる味が生きていると言えるでしょう。
 白骨死体の謎そのものも、落ち着くべきところに落ち着いた感のある結末となっており、著者らしい温かさを感じさせる物語でした。