小学校四年生の時の同級生だった「レイナちゃん」から突然の電話がかかって来た男が、彼女と約束したという「1999年の7月」に会うという約束。そのことを全く覚えていなかった男は、同窓会の計画を立てるために会っていた、やはり同級生だったタカダにその話をしますが、タカダはそれを電話による詐欺ではないかという疑いを口にします(『一九九九年の同窓会』)。
ダイエット飲料会社のコンテストに応募して、見事にダイエットに成功したことで人生を変えるきっかけを得た女性。何かと駄目出しばかりをする母親や、綺麗になった自分とは反対に老けこんだり結婚に失敗したりする女友達に、優越感を抱いて接する彼女ですが……(『いつまでも、仲良く』)。
自分にはデキ過ぎる前の彼女と別れ、新しい彼女と付き合い始めた主人公ですが、ある日突然彼女の弁護士だという人物が彼を訪ねてきます(『小田原市ランタン町の惨劇』)。
会社に派遣で勤めながらライターの仕事をしているなっちゃんが思い出す、伯母の家に住んでいた子どもの頃、近所に住むエミちゃんとミカちゃんという姉妹と共に、少女マンガ『青い瞳のジャンヌ』に熱中していたことを思い出。ひょんなことで連絡を取ったミカちゃんとの再会で、彼女に起こる『プライベートフィクション』(『自由研究―プライベートフィクション』『夢見ヶ崎―プライベートフィクション2』)。
『みんな邪魔』(旧題『更年期少女』)と姉妹関係にある表題作『プライベートフィクション』2編を含む短編集。
子ども時代には子ども同士で優劣を無意識に競う「女の子」がもつ「狡さ」、そして大人の女同士の妬みや醜悪さが各作品には詰まっており、『プライベートフィクション』では『みんな邪魔』(更年期少女)とリンクすることで、そこからまた何とも生々しい女性たちの負の連鎖が透けて見えてくるのが、実に秀逸な作品となっていると言えるでしょう。
女性同士の「友達」関係に秘められた、互いを妬み足を引っ張ろうとする感情の強烈さは、特に『いつまでも、仲良く』に特に鮮明に現れており、親密な関係を装う中に自分と相手との優劣を競いあい、相手の不幸を秘かに喜ぶような暗い感情が終始鮮明に描かれる、著者らしい一作となっています。
男性を語り手にした『一九九九年の同窓会』と『小田原市ランタン町の惨劇』についても、直接的に伝わってくる女の毒の強さは控えめながらも、主人公の男性を操る女性の怖さや業の深さというものは十二分に感じられる作品となっています。
さらには、表題作『プライベートフィクション』において、現実と虚構との境を曖昧にすることで、作品という枠を超えて伝わる怖さがあります。
総じて著者らしいエッセンスに溢れた作品集と言え、『みんな邪魔』を再読したくなる一冊。