堀川アサコ 『不思議プロダクション』

不思議プロダクション (幻冬舎文庫)
 青森の弱小芸能事務所に所属するモノマネ芸人「シロクマ大福」。東京に打って出るような気概はなく、仕事のオファーも少ない彼ですが、何故か不可解な事件に巻き込まれることになります。絶妙なモノマネを披露しながらも、旧知の人間に追われるように舞台から姿を消した芸人の正体。突然超能力に目覚めたらしい女性と、ある家に里子に出された子どもの行く末。将来性を感じさせるバンドのヴォーカルの男に声を掛ける謎の女。イタコのモノマネをしたら、何故か本当の降霊術をやらされることになった大福が気付く、失踪した女子高生の行方。

 全四編、ミステリ寄りのファンタジーの連作短編集。
 幻想シリーズなどと比べると、ファンタジー要素というのは決して強くはなく、各編の物語で起こる事件は、それなりの現実的解釈により解明されることになります。やや頼りないながらも探偵役をしっかり努める主人公のシロクマ大福や、事務所の美魔女社長や同じ事務所に所属するオカマタレントのソフィアちゃんなど、実に作り込んだキャラクターは、著者の得意とする「不思議」と現実の接点となり得る人物造形を為されていると言えるかもしれません。
 単なるコージーミステリでも、単純なファンタジーでもないからこその味わいと、中途半端で不甲斐ないからこその主人公の自覚と成長も魅力の一作。