堀川アサコ 『幻想温泉郷』

幻想温泉郷 (講談社文庫)
 死者が成仏する前に立ち寄り生きている間の善行も悪行も全て記される「功徳通帳」に帰朝してから成仏していく登天郵便局。かつてこの郵便局でバイトをしていた探し物が得意なアズサは、功徳通帳に悪行が何も記帳されず、また成仏せずに消えてしまう死者の謎を解き明かして欲しいと頼まれます。消えた死者たちは、生前にある温泉を訪れており、そこは罪を洗い流す温泉だというのですが…。

 シリーズ第1作『幻想郵便局』の続編にあたり、郵便局を読んでからそれなりに時間が経っているにもかかわらず、読み始めれば、変わらずに迎えてくれる面々との再会を楽しめたような気持になりました。
 また本作は、飄々として人を食った不可思議な存在たちの織り成すコミカルなやり取りと、事件の根源にあったもののシリアスさや結末の苦さなどが絶妙なバランスを持つ作品であると言えるでしょう。
 主人公のアズサが日常に戻った後の後日談もまた読んでみたいと思わされる一作。