畠中恵 『まことの華姫』

まことの華姫

江戸の地回りの親分である山越の娘のお夏は、父親が姉の死の原因なのではないかという疑いを抱いています。お夏は、父親の持つ小屋でまことの目を持つというお華という人形を相棒にする芸人の月草の舞台に足を運び、姉の死の真相を知ろうとします。

今はもう無くなってしまった「真の井戸」から現れた玉を目にした木偶人形の「華姫」。その華姫を相棒に、腹話術で芸を披露する元人形師で過去に曰くを持つ芸人の月草。そんな二人(?)に、彼らを雇っている地回りの親分の娘である一本筋の通ったお夏が絡み、様々な事件と月草の過去の傷を解きほぐしていくかのような連作短編集。
しゃばけ』など、人ならざる者を作品に登場させてくることの多かった著者ですが、本作では「まことの華姫」に魂があるのか、それともないのかは必ずしも明らかではないような気もします。直接的に人知を超えた妖の存在を肯定しているわけではありませんが、完全に操り手の月草の思惑だけで動いているとも思えない、曖昧で、不可思議に思いを馳せる余地を残した描き方が実に上手く機能していると言えるでしょう。
続編が描かれることがあるのならば期待したい作品。