J・D・ロブ 『紅血の逃避行 イヴ&ローク42』

紅血の逃避行 イヴ&ローク42 (ヴィレッジブックス)
 ニューヨークで遺体で発見された才能に溢れ多くの人に愛されていたチェロ奏者は、何日かにわたって拷問をされた末に殺害されていました。事件を捜査する警部補のイヴは、カップルと思われる二人が、ニューヨークへと旅をする道すがらで、同様の犯行を重ねてきた痕跡を見い出します。

 シリーズ42作目は、ボニー&クライドのようなカップルが重ねてきた快楽殺人の物語。
 この二人が殺人旅行とでも言うべき行為に手を染めた序章で幕を上げる本作は、犯行が無差別であるがゆえに、中々被害者から犯人へと繋がる線は見えてきません。
 ですが、イヴが警部補として生きるニューヨークへと続く彼らの殺人の道筋が少しずつ浮かび上がり、そこからこの犯人たちの存在が徐々に見えてくる丁寧な展開は、いつもながらの説得力があります。
 こうした、点と点が結ばれて線になる面白さに加え、犯人の手に落ちて残虐な拷問を受ける新たな被害者の、少しずつ迫る命のタイムリミットとという緊迫感もあり、そこそこのボリュームのある物語は一気に読ませられてしまう面白さがあると言えるでしょう。