[読了]デイヴィッド・マレル 『廃墟ホテル』

廃墟ホテル
 閉鎖されて今は廃墟となった、20世紀初頭に立てられた豪華ホテルに地下から入り込む「都市冒険者」たちは、畸形の姿となったネズミや猫の徘徊する、長い年月の間閉ざされ続けた廃墟を探索する。かつての豪華な趣を覗かせるこのホテルで起こった、自殺、虐待などの忌まわしい事件の記憶は、ここに住んでいたオーナーの手でその痕跡がそのままに保存されていた。過去の事件に思いを馳せる都市冒険者達だが――。
 と、序盤はホラー小説のような雰囲気で閉ざされた世界の扉をひとつひとつ開いて行きながら、物語は展開します。
 ですが中盤、彼らが直面するのは過去ではなく現在に変わり、終盤では過去と現在が思わぬ結末を持って結び付き、異常な過去を辿る冒険はそのまま悪夢のような一夜となります。

 次々に目の前に現れる異常な光景による、中だるみの無い面白さで非常に読みやすかったです。ただ、あまりにも異質なものを含んだ様々な要素を詰め込みすぎて、伏線に生かし切れなかった感は多少ありました。
 それでも映像化したら非常に面白い作品かもしれませんね。
 そういえばこの作者は『ランボー』の作者でもあるそうで。読み終わって言われて見れば、「ああ」と納得する部分もありました。