マロリー・ラッシュ 『ハーレム・ナイト』

ハーレム・ナイト

 駆け出しの女性探偵であるレイチェルの元にやって来た依頼人は、中東に売られた生き別れの妹を助けて欲しいという先物取引で財を成したランドという男でした。救出のチャンスは、見張りの目が薄くなる、女性しか入れない浴場だけであることに目を付けたランドは、レイチェルを囮として奴隷にし、その浴場へ入り込めるようにしようとします。

 いつもこの手の本を貸してくれる友人に「アラブも試しに手を出してみたら?」と唆されて手を出した1冊。とりあえずアラブじゃありませんでしたが、「私は売り物。」の帯が凄いです。
 ハーレクイン的には人身売買で売られるも、「必ず僕が競り落とし、ほかの男にが指一本触れさせない」という辺りで宜しいのでは無いでしょうか。
 ただし、そもそもの前提としてこの手のミッションを頼むなら私立探偵よりももっと他の職種の方が向いているのではないかという疑問もありますし、実際に浴場での救出劇までの前振り部分が長く、本来あるはずの緊迫感は今ひとつであったという読み方も出来てしまいます。
 また、話の大半を占めているのは、不幸な少年時代を封印したゆえにレイチェルに愛を告げられないランドの葛藤と、それを突き崩そうとするレイチェルの愛情ということになるのでしょうが、その点についても何故そうまでして過去の自分を封じなければならないのかの説得力が弱いことが指摘できます。
 また、ラストのハッピーエンドへの流れは少々駆け足であるあたりも、バランス上は好みの分かれるところになるかもしれません。