上橋菜穂子 『闇の守り人』

精霊の守り人
 父親が王位を巡る陰謀に巻き込まれたために、幼い頃に後にした故国に、女用心棒のバルサは25年ぶりに戻ります。ですが故郷では、バルサを守り育てるために人生を捨ててくれた養父のジグロが卑劣な汚名を着せられていました。

 本作は、バルサ自身が自己を形成してきた過去と向き合う物語となっており、前作で語られていた以上に根の深い陰謀に、バルサは立ち向かうことになります。
 こうした流れにおいては、ステレオタイプのファンタジー作品であれば、主人公バルサの成長物語となるのでしょうが、本シリーズにおいてはバルサがある程度完成されたキャラクターであるという点が非常に特徴的であると言えるでしょう。荒唐無稽な強さではなく、しっかりとしたバックボーンの見える強さを持つ人物として描かれる主人公に、とても好感の持てる作品。
 さらに、独自の世界観は前作以上に掘り下げられ、作品世界は一層の深みと広がりを見せていると言えるでしょう。