日本推理作家協会が、漫画のこち亀30周年の記念に企画したトリビュート・アンソロジー。
7人の作家それぞれが、自作のシリーズキャラクターと原作漫画のキャラクターを絡めたりしながらそれぞれ作品を書き下ろしています。
新宿鮫と両さん、あるいは池袋ウェストゲートパーク・シリーズのマコトと両さんのコラボや、妖怪ぬらりひょんに遭遇した若き日の大原部長の過去の憑き物落とし(?)など、各作家の持ち味が出ているものと言えるでしょう。
もっとも私は原作漫画に関しては読んだことがないので、その辺りはイメージだけではありますが、「こち亀」というロングセラー作品の持つ(おそらく私のような読者にとっては非常に表層的なものではあるのでしょうが)イメージそのままに、作品世界を広げ、あるいは他作家の世界にリンクさせるという意味では、企画的には成功なのでしょうし、参加した作家陣の名前を見るだけでも異色のアンソロジーであることは疑いようもないでしょう。
個人的には、退官した警官が子供の頃に趣味だったプラモ作りを本格的に始め、店に飾ってある両さんのプラモに対抗心を燃やしながら創意工夫を重ねる『キング・タイガー』が一番印象に残りました。
さすがにベテラン作家陣を集めただけのことはあり、単なる二次創作に毛の生えたトリビュートに終わらず、それぞれの持ち味の生かされた作品集となっています。