ジャネット・イヴァノヴィッチ 『カスに向かって撃て!』

カスに向かって撃て! (集英社文庫 イ 4-1)
 裁判所に出頭せず保釈金の返還を困難にする容疑者を追う女奨金稼ぎのステファニー・プラムは、たまたまレッド・デビルと呼ばれるギャングの顔を目撃してしまったり、たまたまギャングの一味の男を車ではねてしまったりと、自然とトラブルを引き寄せてしまいます。犯罪者に目を付けられたステファニーは、彼女の仕事に渋い顔をする同棲中の恋人で刑事のモレノと喧嘩をし、腕利きの奨金稼ぎのレンジャーの留守宅に勝手に上がりこみ、そこを避難所としますが…。

 どうやらシリーズの10作目(前作までは扶桑社から刊行)だったらしく、レンジャーとモレノとステファニーの微妙な関係だの、ステファニーの背景だのといった予備知識がゼロだったこともあり、序盤は面白いのか面白くないのかも良く分からず漫然と読み進めてしまいました。
 物語自体は独立した一編であるとはいえ、登場人物の軽妙な掛け合いやその個性で読ませる部分の大きい作品であるために、それらに関わる予備知識なしに、いきなりここから読み始めたことでの戸惑いのようなものはあったように思います。
 ですが、そうした部分を差し引いても、些か未整理に事態が詰め込まれて羅列される煩雑さと、それを補う勢いの不足を否定出来ない部分はあるでしょう。
 ドタバタ喜劇的なキャラクターの掛け合いや物語の展開も、多少読者を選ぶ気はしますが、シリーズを通して読めばあるいは違った感想になるのかもしれません。