真藤順丈 『庵堂三兄弟の聖職』

庵堂三兄弟の聖職 (角川ホラー文庫)

 遺体を分解し、そこから遺族が手元において亡き死者の代わりに生活を共にする「遺工」を作る職人であることを生業とする庵堂家。父の仕事を受け継ぎ、職人としての腕は持ちながらも、変人の長男。東京で暮らし、次男は仕事と生活に疲れ切った次男。交際する女性がいながらも自らの中の暴力的な衝動を持て余す三男。先代である父の七回忌を前に集まった三兄弟に、ある「バンコウ」から先代が絶縁をしていた相手からの思わぬ依頼が、三兄弟の未来に大きな影響を投げかけます。

 死者のエンバーミングからさらにその先、遺体から遺族が手元に置く「遺工」を作り出すことを生業とする…という設定そのものは、独自性も高く秀逸なものと言えるでしょう。
 本作は一応ホラーに分類はされているものの、設定の枠組みやそこを描く描写にグロテスクさはあっても、物語自体は奇妙にハートフルな家族愛を描いていたりと、必ずしも一般的な「ホラー」ではない部分も大きいかもしれません。
 文体その他、かなり読者を選ぶ作風。