望月守宮 『無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜』

無貌伝 〜綺譚会の惨劇〜 (講談社ノベルス)
 ヒトデナシと呼ばれる怪の無貌に顔を奪われた探偵の秋津の下で働く古村望は、秋津と並ぶ三探偵の一人である御堂八雲の主催する「綺譚会」に招待されます。そこで語られるのは、かつて秋津の助手であった相原が遭遇した足跡のない殺人現場の謎の物語を皮切りに、無貌やその縁の「魔縁」と呼ばれるものたちの関わった幾つもの事件でした。次々に過去の物語が披露される綺譚会の目的とは。

 物語本流とはさほど関係なく思える作中作の短編が、積み重ねられることによって作品世界の過去から現在の裏側を埋めてくれるという構成が冴える一作。
 最後の綺譚が終わると、突然に様々なことが明らかになり、そして急展開のまま次作へ持ち越しという、とてつもない盛り上がりのまま物語はいったん幕を下ろすことになります。
 シリーズとしても新たな展開に入り、今後が一層楽しみな作品です。