Scar Symmetry "The singularity (Phase 1 - neohumanity)"(2014)

Singularity

スウェーデンメロデス、スカー・シンメトリーの6thアルバム。
バンドの中心であったヨナスが脱退しており、今後の方向性がどうなるのかとも思わされたこともありましたが、結果的にはブレることなく、Scar Symmetry の世界観は継承され、ひとつの方向性を見出していると言えるでしょう。
元々このバンドにはSF的なテイストが備わっていましたが、本作はそこに壮大なストーリーを添えたアルバムであり、その物語をコンセプトにした三部作の第一作として製作されたものとなっています。
まんまウィリアム・ギブスンの作品名でもある、#7の"NEWROMANCER"というタイトルを見ただけで分かる、サイバーパンク的なコンセプトは、このバンドが持つ世界観を拡張したとも言えるものであり、個人的にはこのコンセプト自体がドストライクだったこともあって、非常にお気に入りの1枚となりました。
あくまでも個人的な嗜好からくる主観ですが、コンセプトアルバムというと、出来はそこそこであっても、どうもそのコンセプトに縛られてバンドの個性や良さという面では「薄い」仕上がりになってしまっていたり、場合によっては「ハズレ」というのも多々あるのですが、本作に関しては全くもって「アリ」でした。
サイバーパンクのイメージは、どこか冷たく機械的なもの、音楽のジャンルで言えばむしろテクノやインダストリアルの持つ質感の方が近いのでしょうが、メタルのベタベタなまでにストレートなドラマ性であるとか、このバンドの持つメロデスらしい叙情性や暴虐性といったものが、意外にもピンポイントでサイバーパンクに対するアプローチを果たしているのかもしれません。
伊藤計劃とか読んで欲しいなぁ……と、ふと思ってしまいました。