西尾維新 『零崎双識の人間試験』

 戯言シリーズの番外編ですが、この先のシリーズ展開にもきっと関わってくるんだろうな、という部分もありました。
 何となくミステリ的な手法を使ったのかなという部分も無きにしもあらずではありますが、作品としてはミステリ作品じゃないですねぇ。その辺り西尾維新は確信犯的なところもあるように思いますが、確かにそんなジャンルに固執することには大した意味などないのでしょう。

 相も変わらず西尾作品では人の死は「軽い」です。無意味に山ほど人が殺されているのですが、確かにそこには従来のミステリや他の小説で描かれたのとは違うアプローチの「死」が描かれているんですよね。
 作品内で登場人物が感じる、自分は「決してどこにも辿り着けない」というのは、ある意味今の時代の閉塞感そのものなんでしょうね。

 何年も前のことになりますが、『リアリティ・バイツ』というウィノラ・ライダーとイーサン・ホーク主演の映画のことを思い出しました。あの映画で描かれていたのは“ジェネレーションX”という、「将来が今より良くなるとは思えない」夢を持てない世代の若者達でした。
 そういう、自分が将来社会の一員として何者かになっていることに夢も現実感を感じられない、まさに「決してどこにも辿り着けない」「終わりのない中途」というキーワード、どこか分かるような気もします。