西澤保彦 『両性具有迷宮』 

両性具有迷宮 (双葉文庫)

何と言うか、弾けちゃったなぁという感想です。
ジェンダーというテーマは西澤作品には良く登場するのですが、男女の性差から来る考え方や嗜好の違いというかなり難しいテーマを、官能コメディ仕立てにしてしまったというんでしょうか。
西澤作品では他のものでもそう感じることがあるのですが、著者は男性だというのに非常に男性のエゴというものに対して手厳しい部分があります。男性上位社会や、それを支える信仰、むしろ迷信とでもいうものを的確に指摘するんですよね。

ミステリとして読んだ時には、些か犯人へと辿り着く過程が途中からは急展開が過ぎる気もしますが、そもそもの前提となる物語が馬鹿馬鹿しいまでの状況だったりするので、深く考えずに楽しんだ者勝ちという気もします。
実在の作家を登場人物として登場させるなど、少々驚かされることの多い1冊でしたが、突飛な中にも緻密に計算されて構築された物語ではあると思います。